2025年本屋大賞決定!話題の受賞作品と全ノミネート作品まとめ

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2025年4月9日、明治記念館で「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 2025年本屋大賞」の発表会が開催され、阿部暁子さんの『カフネ』が大賞に選ばれました。本屋大賞は全国の書店員が自分で読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本に投票する賞です。今年も個性豊かな作品がノミネートされましたが、食を通じた心の交流を描いた『カフネ』が見事栄冠を手にしました。

今回は大賞作品をはじめ、ノミネート作品の順位や見どころをご紹介します。気になる作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。

2025年本屋大賞 受賞作品『カフネ』とは

2025年本屋大賞に輝いた『カフネ』は、岩手県花巻市出身の阿部暁子さんによる作品です。全国488書店、652人の書店員による一次投票を経て、二次投票では336書店、441人の書店員がノミネート作品を全て読んだ上で投票した結果、581.5点という高得点で大賞に選ばれました。

作品概要と受賞のポイント

『カフネ』の基本情報は以下の通りです。

項目内容備考
タイトルカフネ2025年本屋大賞受賞作
著者阿部暁子花巻市出身・39歳
出版社講談社現在11刷32万部突破

阿部暁子さんは2008年「屋上ボーイズ」で第17回ロマン大賞を受賞してデビューし、2020年の「パラ・スター」2部作は「本の雑誌」が選ぶ2020年度文庫ベスト10第1位に選ばれるなど、着実にキャリアを積み重ねてきました。『カフネ』は第8回未来屋小説大賞、第1回あの本、読みました?大賞も受賞しており、本屋大賞受賞で三冠を達成する快挙となりました。

『カフネ』のあらすじと魅力

『カフネ』は、最愛の弟を亡くした主人公・野宮薫子と、弟の元恋人・小野寺せつなの物語です。法務局に勤める薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていました。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことになります。

料理人でもあるせつながふるまったあたたかな食事をきっかけに、薫子とせつなの距離は次第に縮まっていきます。二人はさまざまな困難を抱えた人々の暮らしを整え、心を救っていく過程で、自分たち自身も癒されていくのです。

タイトルの「カフネ」はポルトガル語で「愛しい人の髪を撫でる仕草。頭を撫でて眠りにつかせる穏やかな動作」のことを指し、様々な言葉にならない関係性を描いた作品の象徴として用いられています。「一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい」というキャッチコピーが示すように、食べることを通じた心の交流がこの物語の大きなテーマとなっています。

話題の背景

『カフネ』は岩手県人として初めての本屋大賞受賞作品となりました。阿部暁子さんは本屋大賞初ノミネートでの受賞という快挙を成し遂げ、現在11刷32万部を突破する大ヒットとなっています。

食を通じた人間関係の回復と再生を描いた本作は、コロナ禍を経て人とのつながりの大切さが再認識される中、多くの読者の心に響いたようです。

2025年本屋大賞 全ノミネート作品と順位

2025年本屋大賞には、『カフネ』をはじめとする10作品がノミネートされました。それぞれの作品の順位と得点をご紹介します。

トップ3作品の紹介

2025年本屋大賞のトップ3作品は以下の通りです。

順位作品名著者・出版社得点
1位カフネ阿部暁子(講談社)581.5点
2位アルプス席の母早見和真(小学館)353点
3位小説野崎まど(講談社)345点

2位の『アルプス席の母』は、早見和真さんによる高校野球を題材にした作品です。しかし、球児ではなく球児を支える母親の視点から描かれているのが特徴的です。秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てています。野球に打ち込む中学生の航太郎が大阪の高校に進学することになり、菜々子も大阪へ引っ越すことを決意します。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子など、様々な困難に直面しながらも息子を支え続ける母親の姿が描かれています。

3位の『小説』は、野崎まどさんによる作品で、タイトルがシンプルながらも内容は奥深い作品となっています。

4位から10位の作品

4位以下のノミネート作品も、それぞれ個性的な魅力を持っています。

順位作品名著者・出版社得点
4位禁忌の子山口未桜(東京創元社)323点
5位人魚が逃げた青山美智子(PHP研究所)234.5点
6位spring恩田陸(筑摩書房)228点
7位恋とか愛とかやさしさなら一穂ミチ(小学館)223点
8位生殖記朝井リョウ(小学館)219点
9位死んだ山田と教室金子玲介(講談社)196.5点
10位成瀬は信じた道をいく宮島未奈(新潮社)163点

10位の『成瀬は信じた道をいく』は、2024年本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』の続編です。前作に引き続き、宮島未奈さんの筆力が光る作品となっています。

2025年翻訳小説部門の受賞作品

本屋大賞には日本の小説だけでなく、翻訳小説部門も設けられています。2025年の翻訳小説部門では、以下の作品が選ばれました。

翻訳小説部門トップ3

2025年本屋大賞翻訳小説部門のトップ3は以下の通りです。

順位作品名著者・訳者・出版社
1位フォ-ス・ウィング―第四騎竜団の戦姫―レベッカ・ヤロス(著)、原島文世(訳)、早川書房
2位白薔薇殺人事件クリスティン・ペリン(著)、上條ひろみ(訳)、東京創元社
3位別れを告げないハン・ガン(著)、筑摩書房

1位の『フォ-ス・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』は、アメリカで爆発的なヒットを記録した新作ファンタジーです。竜と魔法が存在する世界における、死と隣りあわせの訓練と戦闘、仲間との出会い、それと裏腹の疑念や裏切り、そして身を焦がすような恋を描いています。

この作品は「ロマンタジー」と呼ばれる新しいジャンルの先駆けとなった作品です。ロマンタジーとは、ロマンス×ファンタジーを組み合わせた新造語で、恋愛要素とファンタジー要素を融合させた物語を指します。

主人公のヴァイオレット・ソレンゲイルは本を愛する若い女性ですが、母親の命令によって騎手科への入学が決まります。騎手科の学生は三年間の過酷な訓練を受け、生きて卒業できる者は四分の一程度という厳しい世界です。そんな中、ヴァイオレットは幼なじみのデイン・エートスと、誰からも一目置かれるゼイデン・リオーソンという二人の男性との関係に揺れ動きながら、自分の道を切り開いていきます。

2025年「超発掘本!」の紹介

本屋大賞には、新刊だけでなく過去に出版された作品の中から再評価されるべき本を選ぶ「発掘部門」も設けられています。2025年は「超発掘本!」として、クラフト・エヴィング商會の『ないもの、あります』(筑摩書房)が選ばれました。

超発掘本とは

「超発掘本!」は、過去の作品から再評価された1冊を選ぶもので、2023年11月30日以前に刊行された作品が対象となっています。ジャンルを問わず、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと思う本を書店員が一人1冊選んで投票します。

2025年の選出作品

2025年の超発掘本に選ばれた『ないもの、あります』は、クラフト・エヴィング商會による作品です。この本は、「堪忍袋の緒」「舌鼓」「大風呂敷」など、よく耳にするが一度として現物を見たことがない物たちを取り寄せて紹介するという、ユニークなコンセプトの商品カタログのような本です。

推薦者の安田美重さん(三省堂書店東京ソラマチ店)は、「タイトルだけで優勝です。指摘するまでもなく、矛盾しています。これは、ないものをあるといって紹介している商品カタログのようなものです。商品名だけみると、国語辞典かことわざ辞典のようでもあります。どんな商品かはイラストでも確認できます。あったらいいなと思う商品なのに、やっぱりいいやという気持ちになったりします。売りたいのか売りたくないのか。矛盾することで成り立っているなんてすごすぎる。『心を揺さぶられるよりもくすぐられたい』と思っている方はいらっしゃいませんか。迷わずこの本をお薦めします」とコメントしています。

クラフト・エヴィング商會は、吉田浩美と吉田篤弘による制作ユニットで、著書に『クラウド・コレクター雲をつかむような話』『すぐそこの遠い場所』『ないもの、あります』『おかしな本棚』などがあります。装幀の仕事も数多く手がけ、2001年には講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を受賞しています。

本屋大賞とは?選考の仕組み

本屋大賞は、全国の書店員が選ぶ文学賞です。新刊書の書店(オンライン書店も含む)で働く書店員の投票で決定され、過去一年の間に書店員自身が読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本を選んで投票します。

投票のプロセス

本屋大賞の選考は、一次投票と二次投票の2段階で行われます。

一次投票では、全国の書店員が自分が読んで面白かった本、お客様に薦めたい本、自分の店で売りたい本を投票します。2025年本屋大賞では、全国488書店、652人の書店員が参加しました。

一次投票の結果、上位10作品がノミネート作品として選出されます。二次投票では、ノミネート作品をすべて読んだ上でベスト3を推薦理由とともに投票します。2025年本屋大賞の二次投票には、336書店、441人の書店員が参加しました。

本屋大賞の特徴

本屋大賞の最大の特徴は、全国の書店員が選ぶ賞であるということです。書店員は日々多くの本に触れ、お客様の反応も直接見ることができる立場にあります。そのため、「いちばん!売りたい本」をコンセプトに選出される本屋大賞は、読者に広く受け入れられる可能性が高い作品が選ばれる傾向にあります。

また、本屋大賞は2004年に始まり、2025年で22回目を迎える比較的新しい文学賞ですが、受賞作品やノミネート作品は大きな話題となり、売上にも直結することから、出版業界でも注目される賞となっています。

過去の本屋大賞受賞作品

本屋大賞は2004年に始まり、これまでに多くの名作が選ばれてきました。ここでは、直近3年の受賞作品をご紹介します。

直近3年の受賞作

2022年から2024年までの本屋大賞受賞作品は以下の通りです。

作品名著者・出版社
2024年成瀬は天下を取りにいく宮島未奈(新潮社)
2023年汝、星のごとく凪良ゆう(講談社)
2022年同志少女よ、敵を撃て逢坂冬馬(早川書房)

2024年の受賞作『成瀬は天下を取りにいく』は、宮島未奈さんによる作品で、続編の『成瀬は信じた道をいく』も2025年本屋大賞にノミネートされました。

2023年の受賞作『汝、星のごとく』は、凪良ゆうさんによる作品で、2021年の『流浪の月』に続く2度目の本屋大賞受賞となりました。

2022年の受賞作『同志少女よ、敵を撃て』は、逢坂冬馬さんによる第二次世界大戦下のソ連を舞台にした作品で、女性狙撃手の活躍を描いた歴史小説です。

本屋大賞は、毎年4月に発表され、その年の文学シーンを彩る重要な賞となっています。受賞作品は多くの読者に読まれ、中には映画化やドラマ化されるものもあります。

まとめ

2025年本屋大賞は阿部暁子さんの『カフネ』が見事受賞しました。食を通じた心の交流を描いた作品が、多くの書店員の心を掴みました。ノミネート作品も個性豊かな作品が揃い、今年も読書の楽しみが広がりそうです。気になる作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。

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