2025年3月27日、マンガ大賞2025の受賞作品が発表されました。18回目を迎える今年のマンガ大賞では、売野機子さんの『ありす、宇宙までも』が見事大賞に輝きました。本記事では、大賞受賞作品をはじめ、ノミネートされた注目の10作品を詳しく紹介します。マンガ好きの方はもちろん、「どの漫画から読もうか迷っている」という方にも参考になる情報をお届けします。
マンガ大賞2025とは
マンガ大賞は、書店員やマンガ好きの有識者による「マンガ大賞実行委員会」が主催する賞です。2025年で18回目を迎え、「このマンガがすごい!」や「次にくるマンガ大賞」と並ぶ、漫画ランキングの最前線として注目されています。
選考基準と対象作品
マンガ大賞の対象となるのは、前年(2024年)の1月1日から12月31日までに出版された単行本で、最大巻数が8巻までの作品です。電子書籍の場合も、最大巻数が8巻相当までの作品が対象となります。過去にマンガ大賞を受賞した作品は除外されます。
選考プロセスの流れ
選考は二段階で行われます。まず一次選考では、97人の選考員が「人にぜひ薦めたいと思う作品を5作品」選出します。一次選考の結果から得票数の多い10作品がノミネートされ、二次選考では各選考委員がTOP3を選出。得票順で大賞が決定します。今回は238タイトルの中から10作品がノミネートされました。
大賞受賞作品『ありす、宇宙までも』
2025年のマンガ大賞に輝いたのは、売野機子さんの『ありす、宇宙までも』です。小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載されているこの作品は、102ポイントを獲得して堂々の1位に輝きました。
作品のあらすじ
『ありす、宇宙までも』は、日本人初の女性宇宙飛行士コマンダー(船長)を目指す少女・朝日田ありすの物語です。容姿端麗で人気者のありすですが、幼い頃に両親を亡くし、バイリンガル教育の中断により「セミリンガル」という言語障害を抱えています。そのため、日々の授業についていくことができず悩んでいました。
ある日、ありすは孤高の天才・犬星くんと出会います。犬星くんはありすの言語障害に気づき、「おれが君を賢くする」と言って彼女を助け始めます。両親がいる天国に近づくために、ありすは宇宙飛行士を目指して奮闘します。生きづらさを抱える少年少女が地球の引力圏を抜け出し、夢を叶えるまでの熱い挑戦が描かれています。
売野機子の魅力的な作風
売野機子さんは『MAMA』『ルポルタージュ』『インターネット・ラヴ!』などの作品で知られる漫画家です。繊細な心理描写と独特の世界観で、読者の心を掴む作風が特徴です。『ありす、宇宙までも』では、主人公の内面の葛藤と成長を丁寧に描きながら、宇宙という壮大なテーマを織り交ぜています。
売野さんはデビュー16年目で念願のマンガ大賞受賞を果たしました。彼女の描く静かな世界観と宇宙表現が、多くの読者の心を打ったようです。
受賞のポイントと評価
『ありす、宇宙までも』がマンガ大賞で1位を受賞した理由は、単なる宇宙冒険物語ではなく、深い人間ドラマにあります。主人公ありすの心の葛藤や成長が丁寧に描かれており、読者は自然と彼女に感情移入してしまいます。また、宇宙という広大な舞台設定と、「家族」をテーマにした感動的なストーリーテリングも高く評価されました。
作品は既に重版を重ね、『ダ・ヴィンチ』BOOK OF THE YEAR2024 コミック部門4位、宝島社『このマンガがすごい!2025』オトコ編16位など、各マンガ賞でもランクインしている話題作です。
マンガ大賞2025ノミネート作品一覧
大賞に輝いた『ありす、宇宙までも』以外にも、魅力的な作品が多数ノミネートされました。ここでは、2位から4位までの作品を詳しく紹介します。
2位『路傍のフジイ』鍋倉夫
79ポイントを獲得して2位となったのは、鍋倉夫さんの『路傍のフジイ』です。この作品は、道端で出会う様々な人々との交流を通じて、主人公フジイの人生観が変化していく様子を描いています。日常の中の小さな出会いが、人の心をどう動かすかを丁寧に描いた作品で、読者の共感を呼んでいます。
3位『ふつうの軽音部』クワハリ・出内テツオ
75ポイントで3位に入ったのは、クワハリさん(原作)と出内テツオさん(作画)による『ふつうの軽音部』(英題:Girl Meets Rock!)です。高校の軽音楽部を舞台に、音楽との出会いや友情、成長を描いた青春ストーリーです。普通の高校生たちが音楽を通じて自分自身と向き合い、変化していく姿が魅力的に描かれています。
4位『図書館の大魔術師』泉光
69ポイントで4位となったのは、泉光さんの『図書館の大魔術師』(英題:Magus of the Library)です。本と魔法が融合した世界を舞台に、図書館を通じて人々の心を動かす「魔術師」たちの物語です。知識の力と本の魅力を伝える作品として、多くの読書好きから支持を集めています。
注目のノミネート作品をもっと詳しく
5位以下のノミネート作品の中からも、特に注目の作品を紹介します。
『どくだみの花咲くころ』城戸志保の世界観
5位(51ポイント)に選ばれた城戸志保さんの『どくだみの花咲くころ』は、静かな田舎町を舞台にした物語です。どくだみの花が咲く初夏、主人公が過去の記憶と向き合いながら成長していく姿を、繊細なタッチで描いています。日常の中の小さな変化や感情の機微を丁寧に描いた作風が、多くの読者の心を捉えています。
『女の園の星』和山やまの独特な魅力
7位(44ポイント)の『女の園の星』は、和山やまさんによるコメディ漫画です。2020年から「FEEL YOUNG」(祥伝社)で連載されており、とある女子高校の国語教師・星先生と生徒たちの日常を描いています。
感情が顔に現れにくい星先生が、個性豊かな女子高生たちに振り回される日常が、絶妙なユーモアで描かれています。この作品は「このマンガがすごい!2021」オンナ編第1位をはじめ、様々な賞を受賞しており、2025年3月時点で部数は265万部を突破しています。
『COSMOS』田村隆平の新境地
8位(38ポイント)の『COSMOS』は、「べるぜバブ」で知られる田村隆平さんの最新作です。人の嘘を見抜ける高校生・水森楓と、謎の女子高生・穂村燐の出会いから始まるSFヒューマンドラマです。
失踪した友人を「地球外生命体」と言い放つ穂村が語る「宇宙人専門の保険会社・COSMOS」の存在が物語のカギとなります。田村さんの新境地とも言える作風で、未知との遭遇が織りなす鮮烈なストーリー展開が魅力です。
読みやすさで選ぶおすすめ作品
ノミネート作品の中から、特に読みやすさに注目して選んだおすすめ作品を紹介します。
初心者でも楽しめる作品
マンガ初心者の方にもおすすめなのは、3位の『ふつうの軽音部』です。高校生活という親しみやすい舞台設定と、音楽を通じた成長という普遍的なテーマが魅力です。キャラクターの心情描写も丁寧で、読みやすい作品となっています。
また、7位の『女の園の星』も、日常コメディとして楽しめる作品です。短いエピソードの積み重ねで物語が進むため、気軽に読み始めることができます。
短時間で読める完結作品
短時間で読める作品としては、9位の『この世は戦う価値がある』(こだまはつみ)がおすすめです。25歳の限界OLの人生総決算を描いたドラマで、現代社会を生きる若者の悩みや葛藤に共感できる内容となっています。
また、10位の『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』(まるよのかもめ)も、食べることが大好きな主人公の日常を描いたコミカルな作品で、気軽に楽しむことができます。
各作品の読める場所
ノミネート作品を読むための方法を紹介します。
電子書籍で読める作品
電子書籍で読める作品とおすすめのアプリを表にまとめました。
作品名 | おすすめアプリ | 特徴 |
---|---|---|
ありす、宇宙までも | BookWalker | 無料試し読み増量版あり |
女の園の星 | ebookjapan | 70%オフクーポンでお得に読める |
COSMOS | 各電子書籍ストア | 全5巻セットで購入可能 |
特に『ありす、宇宙までも』は、BookWalkerで1巻の無料試し読み増量版が期間限定(2025年3月24日~4月23日)で提供されています。また、『女の園の星』は、ebookjapanやBookLiveなどで70%オフクーポンを利用することで、お得に読むことができます。
無料で試し読みできる作品
多くの電子書籍サービスでは、各作品の冒頭部分を無料で試し読みすることができます。特におすすめなのは以下のサービスです。
サービス名 | 特徴 | 対応作品 |
---|---|---|
ebookjapan | 会員登録なしで試し読み可能 | 女の園の星、ありす、宇宙までも |
Amebaマンガ | 4000冊以上の無料マンガが毎日更新 | 女の園の星、ふつうの軽音部 |
BookWalker | 期間限定の無料試し読み増量版あり | ありす、宇宙までも |
無料試し読みを活用して、自分の好みに合った作品を見つけるのがおすすめです。また、図書館でも一部の作品が借りられる場合があるので、地元の図書館もチェックしてみてください。
過去のマンガ大賞受賞作品との比較
マンガ大賞2025の受賞作品と過去の受賞作品を比較してみましょう。
トレンドの変化
近年のマンガ大賞では、SF要素を含む作品が増えています。2024年の大賞は泥ノ田犬彦さんの『君と宇宙を歩くために』、そして2025年は『ありす、宇宙までも』と、2年連続で「宇宙」をテーマにした作品が選ばれました。
また、主人公のハンディキャップや生きづらさを描いた作品も増えています。『ありす、宇宙までも』の主人公ありすのセミリンガルという言語障害や、『路傍のフジイ』の社会との関わり方など、現代社会における多様性や包摂性を反映した作品が評価されています。
読者層の広がり
マンガ大賞は、従来のマンガ読者だけでなく、幅広い層に支持される作品を選出する傾向があります。『ありす、宇宙までも』は、宇宙飛行士を目指す少女の物語という設定ながら、言語障害や親との死別、アイデンティティの問題など、普遍的なテーマを含んでいます。
また、『女の園の星』のような日常コメディから、『COSMOS』のようなSF作品まで、ジャンルの多様性も広がっています。これは、マンガ文化自体の裾野が広がっていることの表れと言えるでしょう。
まとめ:マンガ大賞2025から見える漫画の今
マンガ大賞2025では、売野機子さんの『ありす、宇宙までも』が大賞に輝きました。言語障害を抱えながらも宇宙飛行士を目指す少女の物語は、多くの読者の心を打ちました。ノミネート作品には、日常コメディからSF、青春ものまで多彩なジャンルが揃い、現代マンガの豊かな表現力を感じさせます。ぜひお気に入りの一冊を見つけて、新しい物語の世界に飛び込んでみてください。