美術館の学芸員からアート小説の先駆者へと転身した原田マハさん。彼女の小説は、芸術作品や歴史的背景を巧みに織り交ぜながら、読者の心に深く響く物語を紡ぎ出します。「アート小説を読んでみたいけれど、どれから始めればいいのかわからない」「原田マハさんの代表作を知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、原田マハさんの魅力と、初めて読む方にもおすすめの5作品を厳選してご紹介します。美術の知識がなくても十分に楽しめる作品ばかりですので、ぜひ参考にしてみてください。
原田マハさんの魅力とは?アート小説の先駆者
原田マハさんは2006年、『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、作家デビューを果たしました。それ以来、美術作品や芸術家を題材にした「アート小説」というジャンルを確立し、多くの読者を魅了し続けています。
原田マハさんのプロフィールと経歴
作家になる前、原田マハさんはニューヨーク近代美術館(MoMA)や森美術館などで学芸員として勤務していました。その経験から培われた深い美術の知識と鋭い審美眼が、彼女の小説の基盤となっています。
美術コンサルティングやキュレーションの経験を活かした彼女の小説は、芸術作品の背景にある物語を掘り下げ、読者を新たな世界へと誘います。美術に関する専門書も執筆しており、『現代アートをたのしむ 人生を豊かに変える5つの扉』や『CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術』など、美術の見方を伝える本も高い評価を得ています。
「アート小説」という独自のジャンルを確立
原田マハさんの作品の最大の特徴は、美術作品や芸術家の生涯をフィクションとして再構築する「アート小説」というスタイルです。彼女の小説は、美術の知識がない読者でも楽しめるよう、専門的な内容をわかりやすく、そして何より物語として面白く描いています。
入念な取材に基づいた描写は、まるでその場所に立っているかのような臨場感があります。フランスやスペイン、オランダなど、世界各地を舞台にした物語は、読者を旅に連れ出してくれるような感覚を与えてくれます。
また、史実をベースにしながらも、フィクションとノンフィクションの境界を巧みに曖昧にすることで、読者を物語の世界に引き込む技術も彼女の魅力の一つです。どこまでが事実で、どこからが創作なのか、その絶妙なバランスが読者を魅了します。
原田マハさんのおすすめ小説5選
それでは、原田マハさんの作品の中から、特におすすめの5作品をご紹介します。どの作品も原田マハさんの魅力が詰まった傑作ばかりです。
『本日は、お日柄もよく』—言葉の力が人生を変える感動作
作品の概要と見どころ
『本日は、お日柄もよく』は、言葉の力をテーマにした青春小説です。OLの二ノ宮こと葉が、密かに想いを寄せていた幼なじみ・今川厚志の結婚式で、伝説のスピーチライター・久遠久美の素晴らしいスピーチに感動し、彼女に弟子入りするところから物語が始まります。
言葉の修行を積んだこと葉は、父の遺志により初めて衆議院選に立候補する厚志の選挙を手伝うことになります。政治の世界で言葉の力を試されること葉の成長と、人と人を結びつける言葉の可能性が描かれています。
2017年にはドラマ化もされ、累計50万部を突破した人気作品です。原田マハさんの作品の中でも特に人気が高く、ブクログのユーザー登録数でも1位を獲得しています。
読者の心を掴む魅力
この作品の最大の魅力は、登場人物たちの心に響く言葉です。結婚披露宴での久美の祝辞をはじめ、15歳の久美にある政治家が語りかけた言葉など、作中に登場する台詞の数々は、読者の心を強く動かします。
また、「人並みな幸せが、この先自分に訪れることがあるのだろうか」と気が滅入ること葉の焦燥感には、多くの読者が共感するでしょう。日常の中で感じる不安や焦り、そして成長していく姿が丁寧に描かれています。
言葉について考えさせられるハートフルな物語で、読後には爽やかな気持ちになれる一冊です。
『楽園のカンヴァス』—芸術の世界に引き込まれる傑作
作品の概要と見どころ
『楽園のカンヴァス』は、アンリ・ルソーの名画「夢」をめぐる絵画鑑定ミステリーです。ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンがスイスの大邸宅で見た「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませます。ライバルは日本人研究者・早川織絵。7日間という期限の中で、二人はルソーとピカソの秘密に迫っていきます。
第25回山本周五郎賞を受賞し、第10回本屋大賞では第3位に選ばれた話題作です。原田マハさんがMoMAに勤務していた経験を活かした、アートにおける造詣の深さが最も感じられる作品の一つです。
美術ファンでなくても楽しめる理由
「美術に詳しくないから…」と敬遠する必要はまったくありません。本作は、アート×恋愛×ミステリーの要素が絶妙に絡み合い、美術の予備知識がなくても十分に楽しめる作品です。
読者からは「美術に詳しくないのに、ぐいぐい引き込まれます」「一気に原田マハさんマジックにかかりました」という声が多く寄せられています。読み終えた頃には、アートの魅力に魅了されていることでしょう。
時系列に沿って少しずつ謎が明らかになっていく展開に、ドキドキしながら読み進められる一冊です。美術作品への興味が自然と湧いてくる、そんな魅力を持った小説です。
『生きるぼくら』—人生の再出発を描く優しい物語
作品の概要と見どころ
『生きるぼくら』は、人生の再出発をテーマにした物語です。原田マハさんの作品の中でも、特に人間ドラマに重点を置いた作品として知られています。
物語の詳細は検索結果に含まれていませんが、タイトルからも伝わるように、生きることの意味や人生の再スタートについて考えさせられる内容となっています。原田マハさんのランキングでも常に上位に入る人気作品です。
共感できるリアルな人間ドラマ
この作品の魅力は、登場人物たちの等身大の悩みや葛藤、そして成長の過程が丁寧に描かれている点です。読者は自分自身の人生と重ね合わせながら、物語に深く共感することができます。
人生に迷ったとき、新たな一歩を踏み出したいとき、この物語は静かな勇気を与えてくれるでしょう。優しさに満ちた筆致で描かれる人間ドラマは、読後も長く心に残ります。
『キネマの神様』—映画への愛が詰まった感動作
作品の概要と見どころ
『キネマの神様』は、映画と家族の絆をテーマにした感動作です。39歳で会社を辞めた主人公・歩は、趣味が映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚します。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに、歩は編集部に採用され、父の映画ブログをスタートさせることに。”映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語です。
第8回酒飲み書店員大賞を受賞した本作は、2021年に映画化もされ、大きな話題となりました。
映画化された作品との違い
原作小説と映画版には、いくつかの違いがあります。映画版では物語の設定や登場人物の関係性に一部変更が加えられていますが、「映画館で映画を見る醍醐味」という核心的なテーマは共通しています。
原作の魅力は、80歳の父が始めた映画ブログに載っている映画論の深さにあります。『七人の侍』や『ニューシネマ・パラダイス』など、実在する映画作品も数多く登場し、映画好きな方はもちろん、映画にあまり詳しくない方でも共感しながら読むことができる作品です。
『たゆたえども沈まず』—ゴッホの生涯を描いた感動作
作品の概要と見どころ
『たゆたえども沈まず』は、フィンセント・ファン・ゴッホの生涯を描いた感動作です。ゴッホの生涯と、彼を取り巻く人々の物語が丁寧に描かれています。
原田マハさんの作品の中でも特に美術史に深く踏み込んだ作品であり、ゴッホの芸術と人生への深い理解と敬愛が感じられる一冊です。ブクログのランキングでも常に上位に入る人気作品となっています。
歴史と芸術が融合した物語の魅力
この作品の魅力は、歴史的事実と創作が見事に融合している点です。ゴッホの生涯という史実をベースにしながらも、原田マハさん独自の視点で物語が紡がれています。
読者からは「ゴッホを取り巻くご家族、林忠正さんの生き様など、美術への興味が爆上がりでした」という声も寄せられています。芸術家の生涯を通して、芸術の持つ力や人間の可能性について考えさせられる作品です。
また、本作を読んだ後に『リボルバー』を読むと、ゴッホの死の謎に迫るミステリーとして物語がつながり、より深く楽しむことができます。
原田マハ作品の魅力を最大限に味わうための読み方
原田マハさんの作品は、それぞれが独立した物語でありながら、テーマやモチーフによってつながりを持っています。ここでは、原田マハ作品をより深く楽しむための読み方をご紹介します。
テーマ別で選ぶ原田マハ作品
原田マハさんの作品は、テーマによって分類することができます。自分の興味や気分に合わせて選ぶと、より作品を楽しむことができるでしょう。
テーマ | おすすめ作品 |
---|---|
アート | 『楽園のカンヴァス』『たゆたえども沈まず』 |
人間ドラマ | 『生きるぼくら』『本日は、お日柄もよく』 |
恋愛 | 『カフーを待ちわびて』『スイート・ホーム』 |
旅 | 『旅屋おかえり』『さいはての彼女』 |
家族 | 『キネマの神様』『お帰りキネマの神様』 |
例えば、美術作品や芸術家に興味がある方は「アート」テーマの作品から、人間関係や成長物語が好きな方は「人間ドラマ」テーマの作品から読み始めるとよいでしょう。
初めて原田マハ作品を読む方へのアドバイス
原田マハさんの作品を初めて読む方には、まず『本日は、お日柄もよく』か『楽園のカンヴァス』から始めることをおすすめします。この2作品は、原田マハさんの代表作であり、多くの読者に愛されている作品です。
また、関連する作品を順番に読むのも楽しみ方の一つです。例えば、『楽園のカンヴァス』を読んだ後に『暗幕のゲルニカ』を読む、あるいは『たゆたえども沈まず』を読んだ後に『リボルバー』を読むと、作品同士のつながりを感じることができ、より深く物語を楽しむことができます。
読者からは「『楽園のカンヴァス』→『暗幕のゲルニカ』の順に読むのがおススメです」という声も寄せられています。作品間のつながりを意識しながら読むことで、原田マハワールドをより深く堪能することができるでしょう。
原田マハさんの作品が多くの読者に愛される理由
原田マハさんの作品が多くの読者に愛される理由は何でしょうか。ここでは、その魅力を掘り下げてみましょう。
共感できるキャラクターたち
原田マハさんの作品に登場するキャラクターたちは、非常に人間味があり、読者が共感できる存在として描かれています。彼らの悩みや葛藤、成長の過程は、私たち自身の人生と重なる部分が多く、自分自身を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
例えば、『本日は、お日柄もよく』のこと葉は、恋愛や仕事の悩みを抱えながらも、自分の道を見つけるために奮闘する姿が描かれています。このような等身大のキャラクターが、読者の心に深く響くのです。
丁寧な描写と研究に裏打ちされた世界観
原田マハさんの作品のもう一つの魅力は、丁寧な描写と徹底した研究に裏打ちされた世界観です。特に美術作品や歴史的背景を扱った作品では、その深い知識と理解が随所に感じられます。
例えば、『楽園のカンヴァス』では、アンリ・ルソーの作品「夢」についての詳細な描写や、当時の芸術界の状況が生き生きと描かれています。このような専門的な内容を、わかりやすく、そして何より面白く描く技術は、原田マハさんならではのものです。
また、実際の場所や作品を訪れて取材を行うという姿勢も、作品の臨場感を高めています。読者は、まるでその場所に立っているかのような感覚を味わうことができるのです。
まとめ:原田マハワールドを堪能しよう
原田マハさんの小説は、アートや歴史、人間ドラマが絶妙に融合した独自の世界観を持っています。美術の知識がなくても十分に楽しめる作品ばかりで、読後には新たな興味や視点が生まれることでしょう。
今回ご紹介した5作品は、原田マハさんの魅力が詰まった傑作ばかりです。ぜひ、あなたの興味や気分に合わせて、原田マハワールドの扉を開いてみてください。きっと、心に響く物語との出会いが待っていることでしょう。